Everglades National Park(エバーグレイズ国立公園)はフロリダ半島の南部に位置する湿地帯。正確にはフロリダ半島の南端から50マイル北にある湖を水源とし、50マイルで数十cm分しか高度差のない非常に緩やかな川、なのだそうだ。この特殊な環境ゆえに貴重な生態系を維持していて世界遺産に登録されている。マイアミが観光地・リゾート地として栄えるにつれ、水需要の増大と排水による汚染によって環境破壊が進み世界遺産の危機遺産リストにも登録されるに至っている。10年程前だろうか、環境ホルモンが話題になったときに、ボートに乗った自然保護官がペニスの短いワニが大量に発見する映像をNHKのドキュメンタリーでしきりに放送していたのを覚えているかたもいらっしゃると思うのだけれど、あれがエバーグレーズ国立公園の湿地帯だった、というわけだ。
エバーグレーズ国立公園は膨大に広い。google mapsでフロリダ半島の南端を見てみると広大な緑一色のエリアがある。そこがエバーグレーズ国立公園だ。公園の中にはErnest F. Coe、Royal Palm、Flamingo、Shark Valley、Gulf Coastという5つのVisitor Centerがある。エバーグレーズ国立公園の表玄関は公園の東側中央部のErnest F. Coe Visitor Centerで、そこから少し奥に入るとRoyal Palm Visitor Centerがある。このあたりがRoyal Palmエリアになるのだけれど今回はここには立ち寄らなかった。公園の入り口には「World Heritage」と世界遺産に登録されていることを示すプレートもあるようで1観光客としては行ってみたかったのだけれど、とても全てはまわりきれない。公園の南部にはFlamingo Visitor Centerがあり、Flamingoエリアと呼ばれている。このあたりはハリケーン・カトリーナとハリケーン・ウィルマの被害を受け、今も復旧の最中で規模を縮小して公開しているそうだ。ここにも今回は足を伸ばさなかった。
僕が訪ねたのはGulf CoastとShark Valleyだ。マイアミからざっと100マイルほど、ひたすら西にクルマを走らせて、ちょうどフロリダ半島を横断するとGulf Coast Visitor Centerに到着する。荒野にただただ真っ直ぐな道を造ったということなんだろう、道は真西に真っ直ぐ伸びていて行程の真ん中あたりで1度北西方向に曲がり10マイルほど進んで真西に戻る。開拓者の国、アメリカを感じる。道路は片側1車線で中央分離帯のない対面走行、でも道幅はそこそこ広い。それで制限速度は60マイルだから時速に直すと100km弱。この道であれば日本だったら制限速度はよくて80km/h、ひょっとしたら60km/hなんてことになるかもしれない。実情にあわない制限速度にして、その制限速度が守られることを前提にした安全対策を施すというのは砂上の楼閣ではないかと思うのだけれど。
なにしろ移動だけで何時間もかかってしまうこともあって少し気持ちが前掛かりになってしまっていて、気が付いたら(?)この道を時速70〜80マイルで走っていた。この速度だと対向車が大型車両だったりするとちょっと恐い。でも、まあ大丈夫。そうして例の2回のカーブを越えたあたりでふとバックミラーを見ると、非常灯をともしたパトカーが後ろに張り付いていた。あわてて脇に停車する。こういう時はどうするんだっけ?とにかくじっとしてないといけないんだったかな・・・。違反として取り締まられたら日本の反則キップとは全然違う制度なんだろうか。どこかに出頭とかしないといけないんだろうか・・・。警察官が運転席のドアの向こうに現われる。窓を開けると免許証を見せろと言われ、国際免許証と日本の免許証の両方を見せる。「合衆国の法律は知ってるか?」「はい・・・」「ここは時速60マイルまでだ」「はい・・・」「気をつけて運転してくれ」「はい・・・」結局お咎めなしで開放してもらえた。ラッキ−。その後は当然60マイルをキープ。それにしてもこれだけ広いエリアでパトカーとは対向車としてすれ違ってもいないので、誰かが通報したのか、衛星か何かで監視してたりするのだろうか。
そうしてようやくGulf Coast Visitor Centerに到着。エバーグレーズ国立公園は雨季にあたる1月から4月までがハイシーズンのようで5月に入った今の時期はオフシーズンのようだ。そのせいなのか、そもそもこれくらいの人出なのか、Visitor Centerのあたりは閑散としている。それでもアメリカ人の家族やカップルが数組。ここでは1時間30分のボートツアーのアクティビティが提供されている。Gulf Coastはフロリダ半島の西側で、東側のマイアミが大西洋に面しているのに対し、こちらはメキシコ湾に面している。Gulf Coastエリアで水源の湖から流れてきた淡水とメキシコ湾の海水が合流している。Gulf Coastエリアには1万個の島があると言われ、海水と淡水が入り交じる沿岸に生育するマングローブが生い茂っているという。僕はボート・ツアーに参加しようとここまでやってきたので、もちろん参加してみた。ボートは珍しい動植物の観察できるゾーンでは速度を落として解説も交えながら進んでいくのだけれど、残念ながら英語力がおぼつかなくて解説のほうはあんまり理解できなかった。マングローブの茂る島々、その間を飛んでいく鳥たち、保護区なので誰もいない美しい砂浜等を眺めながら巡っていく。途中でイルカが見れるというゾーンがあってボートに乗っている公園のガイドと観光客全員で周りを見回したのだけれど結局イルカには会えずじまいだった。ちょっと残念だけれど自然相手なんだからしょうがない。
ガルフコーストのボート・ツアーからの眺め

Gulf Coastを後にして、Shark Valley Visitor Centerを目指す。Shark ValleyはマイアミからGulf Coastに向かうのに通った道を真ん中のあたりまで引き返したところにある。だけれどその前にお昼ご飯の時間だ。途中にJOANIE'S BLUE CRAB CAFEというエバーグレイズ湿地帯で捕れたアリゲータ料理を出してくれる有名なレストランにいってみたのだけれどCLOSEDとのこと。定休日?よくわからないけれど諦めてShark Valleyの近くにあったレストランに入る。と、ここにもエバーグレーズで獲れた「白身魚のフライ1きれ、カエルの足のフライ3本、アリゲータのフライ4個にコールスローとフライドポテトに揚げパン」というプレートのメニューがあり注文してみた。カエルは数年前に名古屋でHoneyがカエル入りラーメンを頼んだときに僕はどうしても食べることができなかったのだけれど、今回はほとんど何の抵抗もなく口にした。自分から能動的に動いたときには心理的ハードルが違うのだろう。よく言われるように鶏肉のような淡白な味だ。白身魚はCatfishという種類なんだけれどまあ普通の白身魚。淡白な味という以外になんということはない。アリゲーターはとにかく噛み切るのが大変で味よりもそのことの印象が強い。硬さは部位によって違うみたいで2切れ目はすっと食べることができた。まあ、いい記念になったというところだ。
エバーグレーズ産のフライ・プレート
手前:白身魚、真ん中:ワニ、奥:カエル

Shark Valley Visitor Centerは前にも述べたとおり、マイアミからGulf Coastに至る道路の中ほどにある。この道路はエバーグレーズ国立公園の北側の境界にそって走っている。Visitor Centerからは公園の内側である南に向かい途中で北に向きを変えて戻ってくる往復30〜40kmほどの散策ルートが用意されている。自転車をレンタルして見てまわることもできるし、Visitor Centerのまわりであれば歩いてまわることもできる。僕はトラム・ツアーという日本でも観光地によくある1列に何人かが並んで座れるイスが何列もあって屋根と横の囲いはあるけれど窓の位置には柱しかないオープンなクルマに乗ってこのコースを2時間かけて1周するツアーに参加した。湿地帯は乾季ということで水がほとんどなく、ところどころ池になった水が残っているところがある。そういう場所ではGulf Coastのボート・ツアーの時に見た鳥をみることができた。道路わきの水路に時々ワニを見かけることができる。ソーグラスの木々。折り返し地点ではクルマから全員降りて、エバーグレーズのシンボルの1つ、タワーに登ることができた。このタワーは螺旋上のスロープで頂上に登ることができる真っ白なタワーでなかなか面白い形だし壮観でもある。登る途中で眼下の池にワニを見ることができるし、頂上からの360°の眺めは素晴らしい。このタワーのような場所は写真ではなかなか全貌を捉えることができないのでビデオの出番だと張り切るのだけれど、ちょうどこのタイミングで調子が悪くなってしまって、この後はカメラだけになった。残念。復路ではクルマが通る道にカメやワニが乗り出してきていて見応えがあった。そういえばお昼ご飯の時にカメ料理はでてこなかったな。
エバーグレーズのシンボル、シャークバレーにある純白のタワー

シャークバレーのトラム・ツアーで観れるワニとカメ

本当はこの後、エバーグレーズ国立公園の周辺のレジャー施設で、エアーボートというスクリューが無くてボートの後ろに大型の扇風機のようなものが付いたボートで水深の浅い湿地帯を巡るツアーにも参加したかったのだけれど、もう戻らないといけない時間になってしまい、涙をのんで諦めることにした。もう多分、生涯ここに来ることはないだろう。あ、あそこにワニがいた!ようやく見つけたよ的な観光をしながらも、開発と自然の両立ということを考えさせてくれる貴重な場所だと思う。
